2012年08月09日

金環食に思う

 「というわけで5回連載の5回目になりましたよ。鮫形鐘一郎さん」

 ご多忙の中、鮫間勝代さんには長時間にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。

 「何よ今さら。兄妹でこんなよそよそしい会話」

 親しき仲にも礼儀ありとか申しましてね。

 「最近はそんなに親しくもなかったけどね」

 ワハハ。まあ慰労も兼ねてシャンパンでも開けようか・・・ポン!

 「ジャカール・ブリュット・モザイク。2002年の白。なかなかいいの用意したじゃない。フルーティーな味わいでエレガントな泡立ち」

 お前は川●な●美か!

 「まあまあ。はい、お疲れ様でカンパーイ」

 チアーズ、と。ゴキュゴキュゴキュ・・・プハー。

 「ちょっと!ビールみたいな飲み方しないで!」

 最初の一杯はどうしてもこれをやらないと駄目なんだよ。

 「あ、この黒コショウ入りのフロマージュおいしいー。まさに・・・」

 俺が嫌いなマリアージュがどうこうとかのフレーズは使わないように。

 「んぐっ・・・お便りコーナー行きます」

 そんなにツイッターに来てんの?

 「私の仕事のメールにもお兄ちゃん宛のが混じってて迷惑してるわ」

 そりゃすまんね。

 「本文にウォーゲームとか変な単語があるメールは弾くようにフィルターしているから大丈夫」

 あ、そう。適当に読んでちょうだい。

 「ウォーゲームの世界は初心者に敷居が高いと思いませんか」

 必ずしも高いとは思わないけどね。

 「官僚的答弁ね」

 残念ながらウォーゲームの場合、初心者がルールをきちんと覚えて、それなりにシステムを動かせるまで時間がかかるよ。ルールブックを読んだだけでは動かし方をイメージしずらいしね。簡単な部類のゲームでも、初めての人にしてはかなりの量のルールを読まなければならない。

 「バカな人には敷居が高いだろう、とおっしゃりたいのかしら」

 ちょっと違うんだよな。コンピューターゲームではコンピューターがやってくれるようなマネジメント部分もウォーゲームではやらなきゃいけないしね。そういう部分を面倒くさがらずにやれるか、というあたりをどう感じるかが大きい気がするね。

 「質問者が言いたいのは、きちんと教えてくれるプレイヤーが少ない、ということじゃないの」

 それは、まあ、そうかな。そういう親切なプレイヤーを見つけられれば、そんなにとっつきにくい趣味ではないだろうね。でも以前に比べれば、インターネットやIT技術の普及で、各地のサークルの情報も増えてるし、通信対戦とかもできるようになっている。やる気があれば、初心者でも腕を上げていく機会はいくらでもあるんじゃないかな。

 「質問者は初心者じゃないと思うわよ。根拠ないけど。おそらく、敷居が高いために初心者が増えず、ウォーゲームが廃れてしまうのを憂慮している人なんじゃないかな」

 毎回ある愚問で嫌になってきたけど、初心者が来ないことでウォーゲーム界がダメになることはないと断言しておくよ、ウォーゲーム界がダメになるのは、今いる人間がダメになるときだけだ。

 「私が思うに、初心者向けゲームを増やせばいいんじゃないの」

 俺の感覚から言うと、初心者ゲームってのは、初めてウォーゲームをプレイした人が「これじゃあ簡単すぎて面白くない。もっと歯応えがある方が面白いんじゃないのか」と思うかどうかを確認するゲームのような気がするけどね。初心者ゲームを面白いと言ってくれたとしても、そこのレベルでとどまっている人は、すぐにプレイしなくなるような気がするよ。もっと本格的なゲームをやってみたいと思う人でなければ続かないんじゃないかな。

 「初心者ゲームを楽しんでいるのは初心者じゃないってこと?」

 俺に言わせれば、最近出ているような初心者ゲームは、なかなかプレイする時間がつくれない忙しい人がやるゲームだね。あるいは、難しいゲームや新しいシステムのゲームを覚える気力が萎えてきたベテランプレイヤーが好んでいるような気がしてならないけどね。

 「でもそういう駄目なベテランが初心者とプレイすれば丸くおさまるんじゃないの」

 そういうベテランが初心者のガイド役になっていないから、というか対戦はしているんだけど、きちんと手ほどきできていないから敷居が高いんじゃないか、と質問者は言いたいんではないかと思うけどね。

 「なるほどね」

 お前が言うように、質問者はベテランゲーマーだろう。新しい人を開拓しようと本気で考えているようにみえるベテランね。

 「本気で考えているようにみえる、って回りくどい言い方ね。つまり、実際は本気で考えてないだろうと言いたいわけ?」

 うまく表現できないけど、俺の感覚で言えば、ネズミ講の末端の人間が、新たなネズミ講の新人を集めようという心理に近いんじゃないかな。

 「そんなこと言っていいのかしら」

 ウヒャヒャ。俺の見立てが間違っているなら、ウォーゲーム界の未来は明るいよ。結構なことだ。でもね、本当にニューカマーが大量に現れたときは、今いるベテランが逆に身の置き場のない環境になるかもしれない、という可能性は認識しておいた方がいいと思うね。ネズミ講と違うってことね。

 「そんなことばかり言っているから、ますますお兄ちゃんは嫌われるのよ」

 ワハハ。この広いウォーゲーム界で、鮫形一人に嫌われても何の不自由もないと思うがね。ま、俺のように常にマイノリティに身を置き続けると分かることもある、という話だね。

 「少数派であるがゆえに正しい、という論理は証明できないと思うけど」

 そうだよ。証明できない。でも、自信はあるよ。

 「ふーん。じゃ次。鮫形さんが嫌いなタイプのウォーゲーマーは」

 何だそりゃ。そんなの聞いてどうすんだろ。ちゃんと答えようとすると、結構面倒くさいかな。

 「非ウォーゲーマーの私にも分かりやすく説明してほしいわね」

 そうね。恋愛より恋愛論が好きなタイプのゲーマーかな。

 「分かりやすい説明ありがとう。でも、だれかれ構わず口説くタイプのゲーマーの方が嫌われる気もするけど」

 いやいや。そういうタイプのゲーマーの方が恋愛論者より好感持つね。昭和のゲーマーはそういう傾向の人が多かった。自分が得意なゲームや、やりたいゲームを常に持ち歩いて、ゲーム会で暇そうな人をみつけて、簡単だからやってみましょうと誘うタイプ。で、結局は自分がやりたい放題プレイすると。

 「アハハ。何だかんだ言ってお前も楽しんだだろ、ってタイプね」

 ゲーム会に来て暇そうにしてるのは、ナンパスポットでぶらぶらしている女と同じと思っているわけね。ヘボだろうが名人だろうが、とにかく対戦相手がほしいというゲーマー。ある意味、健全な欲を持った人だよ。

 「なるほどね。真のプレイボーイはブスにも美人にも平等に声を掛ける。もてない男に限って美人ばかりを追いかける、ってことかしら」

 そういう法則がゲーマーに当てはまるかどうかは分からないけど・・・正確に言うとね、本当に恋愛を重ねた人がする恋愛論はいいんだよ。でも、そういう人ってあんまり論には行かないよね。そんな時間があれば恋愛するから。

 「要は、お兄ちゃんは、経験が少ないのに恋愛論が好きなタイプのゲーマーが嫌いということね」

 嫌いというより、人生短いからもっとゲームしたらどうなんだ、とイライラしてしまう、といった方が正確だね。「命短し恋せよ乙女」はゲーマーにとっても名言だ。

 「でもさあ、社会的常識が欠けているゲーマーとかの方が嫌でしょ」

 よっぽど変な人でない限り、プレイの力量のあるプレイヤーが好きだね。愛想よくPGGを相手してくれるヘボより、無言で鋭いムーブをする人の方が、俺は好きだよ。とは言え、奇声をあげながら鋭いムーブをする人は困るね。

 「次行きます。鮫形さんは、結婚していますか」

 ワハハ。独身だ。

 「何で結婚しないんですか」

 ・・・それは読者じゃなくて、お前の質問だな。

 「そうよ。お父さんの7回忌とお母さんの1周忌も終わってさ。肉親と言えるのは、私とお兄ちゃんの2人だけになったのよ」

 2回離婚したお前にそんなことを言われるとは思わなかったな。

 「私はまだ娘が2人いるけど、いつかは嫁いでいくだろうし」

 まあ1人はとっくにお前に愛想つかして家出してるけどな。

 「・・・」

 あー何で泣くんだよ!俺が悪いみたいじゃないか!

 「・・・ごめんなさい。私が母として至らなかっただけで・・・」

 まあ、もう大人だから心配することないけどな。話を戻して、結婚するだけなら簡単さ。問題はそれが続くかどうか。仮に結婚してもお前と同じことになっただろうなあ、という自信があるよ

 「同じ?」

 そうだ。絶対うまく行くと思って結婚したのに破綻。もう一回ちゃんとやろうとしてまた離婚。

 「私は確かにその通りだったけど、お兄ちゃんもそうなるとは限らないじゃない」

 分かるよ。お前とは違うところもあるけれど、似たところもいっぱいある。

 「やって後悔するか、やらずに後悔するか、の違い」

 まあね。やって後悔した方が人生は面白い、という考えもあるけど、

 「私が言いたいのはさ、結婚しろってことじゃなくて、このままだと私もお兄ちゃんも、資産を抱えたまま孤独死することになるわよ、ってこと。まあ、私の資産の方がお兄ちゃんの十倍以上あると思うけど」

 何か細かいとこでむかつくな。でもね、孤独死って、そんなに悪くない気もするがね。人に余計な迷惑を掛けないという意味では。

 「腐乱死体になったり白骨化して見つかったりしたら迷惑でしょ」

 そうかなあ。逆に言えば、その程度の迷惑で済むなら安い気もするけどね。俺はいつも枕元に、特殊清掃業者に払うぐらいの現金を置いて寝ているから。いつ死んでも迷惑をかけないようにね。

 「用意がいいというか、何と言うか・・・」

 ワハハ。まあ、資産を抱えたまま死ぬのも鮫形兄妹らしくていいじゃない。借金しまくって返さずに死んでしまった方が、人生をおいしく過ごせたという考え方もあるけど。

 「借金を踏み倒す方が得したのか、踏み倒される方が偉いのか」

 もちろん後者だよ。私と違う考えの人に文句を言うつもりもないけどね。

 「まあ、私も同じ意見よ」

 人生というゲームに勝利するということは、ある意味で損をするということだよ。でも損をしたからと言って、人生に勝利したことにはならない。分かるだろ。

 お金は全然ないと困るが、ある程度以上になると、人間は仕事や趣味の満足度の方が重要になるだろ。当たり前の話。お前も年収が10倍になるとかいう本を書いているけど、10倍にするゲームそのものを楽しんでいるだけで、稼いだ金を何かに使うという発想じゃないだろ。

 「ふふん。そういう側面があることは否定しないわ」

 そういう意味ではお前も立派なゲーマーだ。マネーゲーマーだ。平和な時代で、本当に戦争をしているのはお前の方かもしれんね。ウォーゲーマーよりスリルやショック、サスペンスを感じているだろ。

 「確かにリーマンショックのときは、本当にショックを受けたわね。PGGで装甲師団がAEが出るのとはレベルが違うくらいの強烈なのをね」

 何かこう、いちいち腹立つんだよなあ。

 「おやすみなさい。明日は早起きしなきゃいけないんだから」

 ああ、そうだった。寝よ、寝よ。

*****

 「というわけで、今は5月21日午前7時半ちょっと前、新宿の大ガード前交差点に来ています」

 ♪2012年の、金環食まで~・・・さっきまでは雲の間から見えていたんだけどなあ。

 「新宿にある私の兄の高層マンションから皆既日食が見えると思って泊まりで来たら」

 ♪太陽のリングー・・・お、雲がちょっと晴れてきた。

 「部屋が東向きでないのに朝になってから気付き、結局は繁華街まで出てきたという間抜けな話」

 ♪どうしたら伝えられるー・・・おおお、金環食キター!

 「ちょっと私にも日食観測グラス貸しなさいよ。資金は半分出したんだから・・・おおー」

 しかし、不思議だね。太陽を10分以上も連続で見たのは生まれて初めてだよ。そして、今後も見ることはないだろう。日本の多くの人がそうなんじゃないかな。地球上の生命の源とも言える太陽を、そこにあると知りながら、誰もまともに見たことがない。しかも見たといっても、偏光グラスを通じてだから本物を見てはいない。そして、本当に直接見た者は目がつぶれてしまう。真理とは、神の存在とは、まさにそういうものかもしれんね。実に趣深い体験だ。

 「本当に曇りにならなくて良かったわー。日食が起きる時間は何十年も先まで正確に分かるのに、明日の天気はよくわからない、っていうところが面白いわね。科学の力はすごいけど、どこか完璧でなくて」

 さて、今回も5回分読んでくれてありがとう。私が読者諸兄に言いたいことはいつもと同じ。このブログを読んで自分の心に浮かんだ感情、気持ちと素直に向き合ってほしい、ということだ。それこそが自分の最も望むもの、あこがれるもの、恐れるもの、ねたむもの、忘れていたもの、忘れたいもの、あるいはもっと別の何か、だろうから。それを直視して、一人で掘り下げる作業を続けることこそ、ウォーゲーマーとして、さらに一歩進む道だと信じている。

 加えて言うなら、ウォーゲーム界の、そして世の中の「簡単に分かりそうもないこと」には、この金環食のように、分かる人には何十年も先まで分かることもあれば、明日の天気のように、簡単なようで実は誰も分からないことの二種類があることを知っておいてほしい。

 「いつものことだけど、何かもったいぶってるわねー。読者の皆さん、戯言にいちいち惑わされないでね。というわけで、最後は時間旅行でお別れです」

 できれば年内にもう5回やるつもり。あんまり期待せずに待っててくれ。
posted by 鮫形鐘一郎 at 03:11| (カテゴリなし) | 更新情報をチェックする

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